3月11日(金)、第18回卒業証書授与式が行われました。コロナ禍のため、今年度も①卒業証書授与、②学校長式辞、③卒業生答辞、のみの簡略化した内容でした。いつもの卒業式なら、中学校3年間のよき思い出ばかりを振り返るのでしょうが、コロナ禍で様々な行事がなくなってしまった学年です。卒業生代表の山内日菜子さんの答辞には、その苦しみや辛かったこと、逆に改めて学んだことなどが述べられており、胸にグッとくるものがありました。短時間ではありましたが、感動と規律あるよい卒業式でした。参加していただいた保護者も皆様、ありがとうございました。

【学校長式辞】

本日は、第十八回卒業証書授与式に際しまして、ご多用のところ、来賓の皆様のご臨席を賜りまして、誠にありがとうございます。

雪に耐えて、梅花うるわし。梅(うめ)の花が冬の寒さを乗り越え、見事な花を咲かせる陽気となりました。

卒業生の皆さん、「卒業」おめでとうございます。

皆さんにとっての中学校生活は、まさに新型コロナウイルスによって、翻弄された日々だったと思います。修学旅行や体育祭、中体連大会、文化発表会といった、中学校時代によき思い出となるはずの主な学校行事、そのほとんどすべてを経験できずに卒業を迎えることになりました。特に、中体連大会の折には、クラスターが発生し、ほとんどの部活動がそれまでの努力の成果を試す機会も失ってしまいました。大会出場ができずに悔しい思いをした人も多かったのではないでしょうか。顧問の先生方も、皆さんと同じ気持ちだったと思います。

当時、ショックを受けた生徒のため、カウンセラーの方に来校してもらいました。体育館で臨時の全校集会を開催し、今回のことをどのように受け止めれば良いのか、話をしていただきました。皆さんが退場した後、カウンセラーの方から言われた言葉が心に印象深く残っています。「『試練は、乗り越えられる人にしか与えられない』というのは本当なんですね。」「皆さんの様子を見てそう思いました。」「私の出番はもうないと思います。」その言葉通り、すぐに通常の学校生活を取り戻しました。

学校行事や教育活動の中止・延期が何度も繰り返され、コロナ禍ではうまくいかないことばかり。いつも、「またか」という気持ちで一杯だったのではないでしょうか。そのたびに、生徒会の皆さんが、目標を見失わないように、全校生徒に呼びかけ、様々な取組を行ってくれました。おかげで、規律ある学校を保つことができ、学力や体力で成果をあげることができました。人や組織は、うまくいかないときにこそ、本当の力が試されるのだと痛感しました。コロナ禍であっても、「根気強く」「前向きに」「協力し合って」よりよい学校を目指して頑張ってくれた、生徒会をはじめとする卒業生の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。中学校で試練を乗り越えてきた経験を、卒業後も活かしてください。

我が国で新型コロナの影響で仕事を失った人は、ここ1年間で約10万人を超えています。また、コロナ以前にも、我が国は少子高齢化という大きな課題を抱えており、約20年後には、働き手である15歳~64歳までの人口が1500万人も減少してしまいます。さらに追い打ちをかけるかのように、世界情勢に目を転じれば、理不尽な武力侵略が行われ、いまだによい解決方法を見いだすことができていません。決して皆さんに「明るい未来が待っていますよ」と、安易には言えない時代になってきました。

卒業生の皆さんは、この世の中は予期せぬことが起こるものだ、人生はうまく行くことばかりではない、と覚悟しなければなりません。そして、そのような中であっても、試練に立ち向かい、困難と闘っているときにこそ、人としての本当の力が試されるのです。皆さんが、多くの試練を乗り越え、たくましく未来を切り開ていってくれることを心から願っています。

結びに、保護者の皆様に対しまして、簡略化した卒業式で大変申し訳なく思いますが、お子様の「卒業」を心よりお祝い申し上げる次第です。また、これまで、本校の教育に対しまして、ご理解・ご協力をいただきましたことに、厚くお礼申し上げます。お子様の卒業後も、地域の一員として本校を見守っていただき、なお一層のご支援を賜りますようにお願い申し上げ、式辞とさせていただきます。

令和四年三月十一日

学校長 古澤 裕二

【卒業生答辞】

早春の候、木々の目覚めとともに心新たにする季節となりました。私たち三年生は、今日、この那珂川北中学校を卒業します。

本日は私たちのために、素晴らしい式を挙行してくださり、誠にありがとうございます。

先生方をはじめ、来賓の皆様、保護者の皆様にご臨席いただく中で卒業できることを喜ばしく思います。

思い返してみると、この三年間は瞬く間に過ぎ去りました。

三年前の春、ぶかぶかの真新しい制服に身を包み、大人の階段を少しのぼった入学式。不安な気持ちがあったのを思い出します。授業や部活など、初めてのことばかりで戸惑いもありましたが、新たな仲間と助け合いながら成長した一年生。

まず、一年生での自然教室。一人一役の仕事では、役割に責任をもち行動できました。何度もぶつかって、泣いて、笑って、自分たちの力で一つの行事を作り上げたときの達成感は今までに経験したことのないものでした。また、自然教室だけでなく、体育会や合唱コンクールなどでは、キラキラと輝く、先輩方に圧倒されました。その後は、「いつか私たちも先輩方のようになる」という目標を掲げていました。

二年生では、初めて後輩という存在ができ、先輩としてあるべき姿を考え、手本を見せられるように努めてきました。しかし、願っていた行事は軒並み中止となっていきました。

そして、三年生では、後輩に示す姿に磨きをかけ、自分の進路に向けて努力を重ねました。行事こそ多くはなかったものの、何気ない毎日が何にもかえることのできない思い出となりました。三年生で行われた体育会では、二度の延期を乗り越えて実施できました。コロナ禍という苦しい状況の中、一つのものを作り上げたときの達成感は忘れられません。ですが、この体育会を開催するにあたり、辛かったこと、大変だったことは数えきれないほどありました。「どうやったらブロックが一つになれるのか。私たちは後輩に何をすべきなのか。最後の体育会をどうしたいのか。」など、リーダーや実行委員で何度も話し合い、精一杯練習をし、迎えた体育会前日。しかし、コロナの影響で、なんと延期に。明日の本番を待ち望んでいた私たちにとっては絶望的な知らせでした。多くの仲間が涙を流し、先には暗闇が広がりました。しかし、先生からの「前だけじゃなくて上を向こう。みんながこれまで頑張ってきたことは無駄にならない」という言葉を信じ、全員でもう一度頑張ろうと決意しました。私たちはこの体育会で二度の延期を経験し、辛い思いもしましたが、それ以上に、成功するまでやり続けることの大切さを学びました。

このように、コロナ禍だったからこそ得られたものもありましたが、失ったものも多くあります。

私たちのコロナに対する思いは様々です。「早く終息してほしい」という思いだけでなく、「なぜ自由を奪われなければならないのか」「早く友達に会いたい」。学生の私たちだからこそ感じることも多くありました。私たち三年生は、休校になってから、約二年間、「苦しかった」というのが率直な想いです。

しかし、ふと立ち止まって考えてみれば、当たり前だった日常のありがたみ、今この一瞬さえも、かけがえのない時間の一部で、一日一日を大切にすべきだと気づきました。この気持ちは、中学校で得た最も大きな学びです。

この三年間、辛いこともたくさんありました。ですが、側にはいつも仲間の存在がありました。生徒会・部活動・学校生活など、どんな場面でも支えてもらいました。もちろん、仲間とぶつかることだって何度もありました。でも、この学年だったからこそ、どんなときだって、喜びや悔しさを分かち合えたのだと思います。

私は、この学年でよかったです。充実した三年間を、この那珂川北中学校で過ごすことができました。私にとってみんなは宝物です。

私が学年のみんなに伝えたいのは、「ありがとう」という気持ちです。この「ありがとう」という五文字にはたくさんの思いが詰まっています。ここまで私が頑張れたのもみんなのおかげです。ありがとう。みんなは最高の仲間です。また同じ空の下で笑い合える日を楽しみにしています。

そして、周りには、先生方や地域の方々、家族など、支えてくれる存在が常にありました。

先生方の存在はとても大きく、たくさんお世話になりました。先生方の言葉は、私たちの励みとなりました。厳しく言われたときもありましたが、それは、私たちに対する思いがあったからだと感じています。

そして、いつも近くで支えてくれた家族。この三年間、迷惑ばかりかけたと思うし、これからもかけると思います。それでも支えてくれた家族には感謝しかありません。ありがとう。

私たち三年生は、多くの方々の支えがあったからこそ、無事に三年間を終えることができたと思います。支えてくださった方々、本当にありがとうございました。

この三年間、多くの困難もありましたが、最後まで、やりきることができました。私は最高の仲間や、素敵な方々に出会うことができてよかったです。

最後となりましたが、これから私たちは、それぞれ違う道を歩んでいきます。中学校で学んだことを生かし、自分たちの目標とする人間に近づけるよう、日々精進していきます。

そして、那珂川北中学校が素晴らしい歴史を刻んでいかれることを祈念して、答辞とさせていただきます。

令和四年三月十一日

卒業生代表  山内 日菜子