「子どもの成長のために壁になる」 校長 平野 善浩

今年度もあと2ヶ月となりました。3年生は私立の専願入試や公立高校の特色化選抜・推薦入試等も終わり、徐々に進路が決定する生徒が出てきました。1,2年生は2月7日(金)の「総まとめテスト」へ向けて、学力向上に取り組んでいるところです。また、2月8日(土)には、吹奏楽部が宮崎で行われるアンサンブルコンテスト九州大会に出場します。九州大会には4年連続の出場となります。福岡県の代表として、すばらしい演奏をしてきてほしいと思います。

今回は私に起きたある出来事をもとに書いてみたいと思います。先日、散髪に行きました。年末ということもあり、混雑しており、順番待ちをしている人が5名ほどイスに座っていました。私はその最後尾に座り順番を待っていました。私の隣では小学校1年生くらいの男の子がスマホでゲームをしていました。そのゲームの音量がかなり大きく、周りのお客さんもちょっと不快に感じている様子でした。私も我慢していましたが、とうとう耐えきれなくなり、子どもの隣にすわっていたお父さん(30代半ば程)に「すみません、ゲームの音、小さくしてくれませんか?」と頼みました。私はきっとそのお父さんが「あ、申し訳ありませんでした!」と言って、子どもに注意を促すものと思っていました・・・。

しかし、そのお父さんは子どもに向かい「ダメなんだって」と言いました。私は心の中で「ええええええ」と叫びました。(みなさん、このお父さんのセリフをどう思いますか?)これではまるで私がただのうるさいオヤジになってしまいます。「こんな時に公衆マナーについて指導するのは父親の役目だろう!」と思いました。自分の考えは間違っているのだろうか・・この出来事がすごく頭に引っかかっていました。

そんな時にある本を読みました。『「叱らない」が子どもを苦しめる』藪下遊、髙坂康雅著(ちくまプリマー文庫)この本はいじめ、不登校、友達関係等の問題を心理カウンセラーの視点から解き明かした著書です。表紙には、『叱られないのに学校がつらい「世界から押し返される」経験の減少が「思い通りでないと耐えられない」心を生む』と書いてあります。この本の中で、私が理容店で体験したことと似たようなことが書いてありました。

本には、子どもが言うことを聞かず、親が叱るのが面倒くさいので「鬼から電話」というアプリを使って(使ったこともある方もおられると思います)、鬼から電話がかかってきたという体で子どもを怯えさせ、言うことを聞かせるケース。もう一つは、こどもがパン屋さんの店内で陳列しているパンに触れようとしたときに、母親が「店員さんが怒るからね」といって止めさせるケースが書いてありました。このことを著者は「親がおこなわなければいけない世界の押し返し、(叱る、止める、諫める)」の外注と書いています。子どもに注意することの外注の大きな問題点は「子どもが押し返されたときの不快感(注意されたときの不快感)が、本来押し返すべき人、つまり「親」に返らないことと」書いてあります。確かに注意されると、子どもは嫌な気持ちを味わいます。その不快感が親に返ってくると、あまり良い気持ちはしません。このことから、直接子どもに叱ることができない親が増えていると言うことです。「子どもを不快にさせてはならない」と考えて、注意をしなかったり、子どもの思うようにさせたりすることを続けていると、「思いどおりになるのは当然」と万能的な感覚へと変わるリスクも出てきます。

本来注意すべき親がその役割を他の物や他人に外注することで、子どもがその不快感を親との間で納める体験ができなくなることも非常に問題であると述べています。そして、その体験は子どもが幼ければ幼いほうが良いと言うことです。確かに幼い時ほど、親が叱って子どもが不快感を抱えたとしても、親から慰められて立ち直るというストーリーができやすくなります。そして思いどおりにならないことが起きても、その不快な気持ちに折り合いをつけ、徐々に「外の世界に合わせて自分を調整する」能力がついてきます。子どもたちが社会に出ても、そして学校においても、必ず思い通りにならないことはあります。この思い通りにならないことに対する耐性を付けておかないと、様々な環境に不適応になりやすくなるということです。

このように親や関わる大人からの適度に「世界からの押し返し」をすることは子どもの成長に大切なことです。とはいえ、自分の子育てを振り返って、ちゃんと子どもの壁になってたかな・・とも考えます。子どもが不機嫌になったり(中学生の時は特に・・)反抗されたりしたら嫌だなと思って、叱るべき時に叱ってない時もあったのではないかな・・・とも反省します。私はよく温泉に行きます。温泉で泳いでいたり、タオルを腰に巻いて湯船に入ったりする子どもが時々います。注意しようかどうか迷いますが、優しく注意を促し、しっかりと社会の壁になるように努力しています。(できれば一緒に来ている親御さんが注意してほしい・・・)親だけに限らず、大人は子どもの成長にために「社会からの押し返しである壁になる」ことも必要です。嫌な気持ちになることも恐れず・・子どもの行動にたいして適切に押し返すことができる「社会の壁」になれれば良いなと思います。

立志式・著名人による出張授業

1月23日(木)に、2年生の立志式を行いました。式では、各クラス代表生徒が立志作文をプレゼンで発表し、夢や今後の目標を語りました。立志式に引き続き、「著名人による出張授業」を行いました。「エンジン01文化戦略会議」の協力のもと、今年度はノンフィクション作家の神山典士さんに来ていただきました。夢を持つことの素晴らしさと、自分の「夢の分母」(世界や日本など、夢を叶える舞台)を意識し、そのための準備を今からやってほしい、とお話ししていただきました。神山先生は立志式の様子も見られ、「皆さんの姿から素晴らしい教育が行われていることがわかる」とお褒めの言葉も頂きました。2年生の皆さんには、ぜひこの立志式を機に、自分の夢に向かって走り出してほしいと思います。

冬休み課題テストの結果

1月9日(木)に行われた、冬休みテストの結果をお知らせします。

1年生(グラフ中◆)は前回11月の学力診断テストの「53」からポイント上昇し「54」でした。2年生(グラフ中▲)は前回の「56」から変わらず「56」でした。1年生は入学後から毎テストのたびに上昇しています。日々の授業や家庭学習、CSSでの放課後学習、そして学力診断テストへ向けた選択授業など、1,2年生が日々積み重ねている努力が数字となって現れていると思います。1,2年生は2月7日に行われる学力診断テストが今年度の総まとめとして最も重視されます。今までの学力診断テストのなかで最高点が取れるように頑張ってほしいと思います。

3年生(グラフ中■)は前回より1ポイント下がり「52」でした。後期は他の中学校の3年生も受験勉強を本格化させる中、上昇傾向とはなりませんでした。また、年間を通じて学力が向上しなかった教科も出ています。3年生が後期も学力が伸ばせるよう、来年度へ向けて手立てを検討していきたいと思います。

3年生は今月から受験が本格的に始まり、結果が出た生徒もいます。3月の公立一般入試までそれぞれのクラスで受験へ向けて学習しようとする雰囲気が大事です。受験を控えている生徒は、過去問にたくさん取り組むなど、勉強したことをアウトプットする練習を行っていきましょう。また、進学する高校が決まった生徒は、高校へ向けての勉強を始めましょう。吉本道場など、高校の学習を先取りして教えてくれる場が本校にはあります。『受験は団体戦』。卒業までの時間を3年生全員が充実した学習時間をすごせるために、それぞれ頑張ってほしいと思います。

後期体力テストの結果

12月に行われた後期体力テスト(1,2年生)の結果をお知らせします。(3年生は受験期のため実施していません)1年生男子は前期体力テスト(4月)の「46.5」から「52.8」1年生女子は「46.7」から「51」とTスコア(全国平均を50とした場合の全国偏差)で大幅に伸ばすことができました。2年生男子は4月の「57」から「57.5」と0.5ポイント伸ばすことができています。2年生女子は「54.7」から「53.4」と若干ポイントを下げましたが、2年生女子のこの時期の身体的な成長を加味しても高い数値を保っています。

毎日の晴動雨読、体育の時間の補強運動、北風走大会へ向けての持久走の取組など、さまざまな体力向上の取組の成果が数値となって現れていると思います。本校では、運動の効果的な活用に取り組んでおり、「運動を通じての脳力アップ」を目指しています。運動が与える学力面や精神面のよい効果を今後も教育課程に取り入れていきたいと考えています。

高校生平和大使による講話(周年記念行事)

高校生平和大使による講演(周年記念行事)

昨年度から20周年行事として始まったキャリア教育講演会について、今年度は「高校生平和大使」の皆さんにお越し頂き、全校生徒に講話をしていただきました。中学生から一番身近な高校生の先輩たちが、世界平和の実現に向けて署名活動をしたり、小中学校などにおいて平和授業を行ったりしていることや、実際に外国の大使館や国会議員に訪問し、質問した際の話などをしていだきました。『ビリョクだけどムリョクじゃない』という言葉や、高校生平和大使の皆さんの実体験などを聞いて、平和の大切さを改めて考えることができました。この講演会が、中学生にとって平和実現のために今自分ができることを考えるきっかけになってくれることを期待しています。